世界とつながるお手紙交流 -7ページ目

チェチェン紛争告発のジャーナリストが射殺された

ニュースサイトより チェチェン紛争でロシア当局による過剰な武力行使や人権抑圧を告発したロシアの女性ジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤさんが7日、モスクワの自宅アパートのエレベーター内で銃で撃たれて死んでいるのが見つかった。

インタファクス通信などが伝えた。


 遺体のそばに拳銃と薬莢(やっきょう)4発が落ちていた。ポリトコフスカヤさんは、ノーバヤ・ガゼータ紙評論員として99年からのロシア軍によるチェチェン侵攻の後で徹底した現地取材を重ね、プーチン政権の言論統制に抗して紛争の悲惨さを伝えた。


 02年のチェチェン武装勢力によるモスクワでの劇場占拠事件では犯行グループが交渉役に指名。04年の北オセチア共和国での学校占拠事件では、現地に向かう機内で何者かに毒をもられ、重体になった。  


ロシア・ジャーナリスト同盟のヤコベンコ書記長は7日、「彼女の死は何者をもっても代え難い損失だ」と述べた。


引用終わり


本当に残念で悲しい事件だ。唯一の代弁者を失って、チェチェンの人々の心に寂しさを与えてしまったのではないかと思う。でも彼女は自分の感じる使命をまっとうしたのだと思う。


私たちが彼女の伝えてきた事実を広め、チェチェンの人権が守られるようにしていけば良いのだと思う。 アンナポリトコフスカヤさんの「チェチェン、やめられない戦争」を読んで、チェチェンで起こっている事実を知った人はとても多いと思う。


私が知るきっかけとなったのは、チェチェンに関する写真展だったと思う。 石油パイプラインの線に位置するというだけで、ロシアはチェチェン人を追放し抹殺する政策を続けている。 ロシア政府によるチェチェン人のカザフスタンへの強制移住政策によって、強制的に汽車に乗せられ、大雪の中に投げ飛ばされた。このとき、50万人ほどのチェチェン人が、流刑地からチェチェンに戻った時には半減していたと言われる。


チェチェン紛争により、100万人のチェチェン人の人口のうち、20万人が犠牲になった。 ジェノサイドを「テロとの戦い」へすり替えることによって、チェチェン人の人権侵害は続いている。 詳しくは、チェチェン総合情報へどうぞ http://chechennews.org/index.htm


パレスチナもチェチェンもフィリピン政府+米軍によるミンダナオのムスリム迫害も、インドネシア軍によるアチェ迫害も、本当にそっくりだ。 どれもアメリカの言う「テロとの戦い」という言葉にすりかえられて、一般市民を大量に虐殺している。 そして、その狙いは、どれも石油、天然資源、水資源が根本にある。


そしてこれらは「内政問題」という言葉にすり替え、ごまかされている。 そうして最も悲惨な目にあっている人々の情報が途絶え、支援が届けられないでいる。私は国際協力をするにあたって、こうした人々にこそ援助をしたいと思う。


それにしても、これら迫害を受けているのは全部イスラム教徒 ・・・。イスラエルの、パレスチナ住民へのジェノサイドの「テロとの戦い」へのすり替えがアメリカに移り、世界中がそれを良いことに「テロとの戦い」を真似た結果、天然資源目的の一般市民にむけた残虐行為が平然とされるようになってしまった。


その一般市民がイスラム教徒だったら、ますますテロリスト扱い出来て都合が良いのだろう。 キリスト教迫害→ユダヤ教迫害→ときて、今はイスラム教徒迫害の時代だと思う。

報道されていないレバノンの情報

多くの人に知ってもらいたい、という日記だそうです。
私も転載させてもらおうと思います。

皆さんもぜひ転載して下さい。

以下、引用です。



http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=64136&media_id=2

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レバノンより

by ラニア・マスリ; 2006年7月17日
http://signs-of-the-times.org/signs/editorials/signs20060719_NotefromLebanon.php

皆さんが心配していただいているというお手紙に感謝します。

確かに私はレバノンにおります、そして、どこかしらの国が攻撃を受けているという状況のなかで生き延びているという意味では、安全にしております。

まず、皆さんに申し上げたいことは:私たちには世界からの怒りの声が必要だ、ということです。

水曜日(7/13)以来、私たちは悪意のある、不正な攻撃に曝されており、これはより激しくなってきています。

悪意のあるというのは、多分皆さんは西側のメディアが報道しないので知らないかもしれません。これらの写真も西側が印刷しないので見ていなかったかもしれません。
(メディアは写真があることは知っているのですが、これを印刷しようとはしないのです。)

写真はここでご覧ください。http://www.angryarab.blogspot.com/
攻撃ということでは、インフラの損害レベルは1982年のイスラエルによる侵攻によるものを超えています。

各空港は攻撃を受け、旅行には適さなくなりました。主要な空港は(唯一の商業空港ですが)数日に亘って何回も攻撃を受けました。より小規模な軍用空港は、これらのどれもここ何年も使用されていませんでしたが、これらも攻撃され使用不能になりました。

南部から北部に至るまでの各港はイスラエルによって攻撃を受けてきました。
まずはじめに、ジョウニエ港が爆撃されました。
(これについては少し突っ込んだ疑問が湧きますが:アメリカ、フランス、イギリスやイタリア、これらの政府は在レバノン市民に避難を呼びかけたわけですが、どうやって彼らを避難させたのでしょうか?)

数カ所の主要な石油集積所や発電所も破壊されました。
この国の全ての石油集積所は破壊されるおそれがあるという噂まであります。

国内の主要な橋も破壊されました。正確には64の橋です。
どこの橋を渡ろうかなどと言うことは、次のターゲットにされる怖れがあるために口に出すことも躊躇しなければなりません。

この国の主要な交通要所が南部から北部に至るまで破壊されてしまいました。
これは、何を意味すると思いますか?
これは、レバノン国内全てに亘って主要都市間を旅行することは物理的に不可能ということを意味します。

誰も国を出てシリアに行くことも出来ないのです。もっと重要なことは、誰も単に安全にある地域からある地域に移動することもできないのです。
街から街への移動も困難であり、特に南部では村の中でも、ある場所から別の場所への移動ですら危険になっています。
一つの主要道路がまだ使用されていますが(北ベイルートからトリポリに向かう高速道路です)、昨晩からイスラエルはシェッカにあるトンネルを爆撃すると脅しています。
これによって、この主要道路も使うことは、ジュベイル/ビブロスから北部へ、またはその逆という移動も不可能ということになってしまっています。
(基本的なレバノンの地理を言いますと、レバノン中央部から北部へと向かう場合の主要都市は:ベイルート、ジョウニエ、ジュベイル/ビブロス、バトロウン、シェッカ、トリポリということになります。)
この南部の村への攻撃は特に悪意のこもったものと言えます。
イスラエル軍は攻撃対象の村々に避難を呼びかけましたが、その一方で村民が避難する道路を破壊していたのです。
メッセージは明確と言えるでしょう。
『家を出ろ、我々はお前達を殺す。家に居ろ、我々はお前達を殺す。』
彼らはこの両方をやったのです。

これは全体で何を意味するのでしょうか?

イスラエルはレバノン国民を「逃亡」しないように国内に縛り付けて、恐怖によって服従するように仕向けています。
これはテロリズムであり、それも最も純粋な形のテロリズムです。

イスラエルは、この国の全ての主要なコミュニティを攻撃しようとしていますし、我々を孤立させて、食料や医薬品の欠乏や他の生活必需品不足に追い込むことによって序々に「降伏」させようとしているのです。
既に多くの村や主要都市であるソール/タイレでは生活必需品の不足を表明しています。

悪意があるのです。イスラエルの攻撃はインフラに限定されることも無く、「意図的」に市民も標的にしているのです。意図的にやっています。
南部の家々は意図的に標的にされ、攻撃を受けたのです。彼らの意図をどうやって証明しましょうか?
幾つかありますが、まずは平原において爆弾が野原に落ちずに家々に命中しています。我々は1996年のカーナ虐殺において、この種の高精度爆撃を見てきました。この時は、イスラエル攻撃軍は市民が隠れている国連の駐屯地帯を爆撃したのですが、軍は国連スタッフの居住地域の近くはおろか駐屯地を囲む樹木でさえ爆撃しませんでした。

南部では人々が家族ごと殺されました。個別の攻撃によって、4つの家族が、お父さんもお母さんも子供も、虐殺されました。
彼らの体は千切れ、顔は焼けただれていました。

これは、イギリスのインディペンデント紙による攻撃の第一報ですが:

『イスラエルの戦闘機が”まずレバノン南部の都市、ナバティア近郊の小村ドゥウェイルに飛来し、次に爆撃機がイスラム教シーア派の宗教指導者の家に一発の爆弾を落とし、この指導者は死亡した。彼の妻および8人の子供たちも同様に死亡した。
一人は首が落ちた。村人が発見できたのは、一人の赤ん坊の頭部と胴体だけであり、一人の若者がカメラの前でこれを示して怒りをあらわにしていた。
その後、爆撃機はドゥウェイルの別の家に行き、今度は7人家族を吹き飛ばした。”』

とあります。

第5波の攻撃において、イスラエルのテロリスト軍は4家族の住む建物を爆撃しました。生存者は誰もいませんでした。
別の攻撃では、ある家族がイスラエル戦闘機から撒かれた避難を呼びかけるビラを見て国連の建物に避難しようと向かいました。ところが、国連はこの家族を追い払いました。家族が国連の建物を去ろうとしたとき、彼らのバンは爆撃され、粉々になって飛び散ってしまいました。
www.angryarab.blogspot.com
で写真を見てください。見てもらいたいのです。
このような虐殺は延々と続けられてきています。そして、このような虐殺の歴史は、覚えておいて欲しいのですが、イスラエルの侵攻の歴史においてはとくに珍しいものではないのです。

悪意に満ちた、野蛮で怖ろしく、不正なことです。正義ではないのです。

銘記しましょう:イスラエル軍によるレバノン国境への攻撃は、イスラエルの兵士の拘束に伴って水曜日から始まったわけではありません。ここ一ヶ月間以上に亘ってイスラエル軍は国境地帯で実弾演習を行ってきましたが、このときにレバノン人の羊飼いが殺されています。
これに対する「国際社会」の反応は?・・沈黙でした。

また銘記しましょう:イスラエルは自国の監獄にレバノン人を収監し続けています。そしてヒズボラからの要求はここ数年に亘って明確です。ヒズボラは囚人の解放のために活動するということです。レバノン人だけがイスラエルの監獄に入れられているわけではありません。ここには数千人のアラブ系の囚人がいるのです。
イギリスのガーディアン紙による不正確なレポートに対して、ヒズボラの総務長官であるハッサン・ナルサッラ氏は極めて明確に、ヒズボラはこの2人のイスラエル兵士を交渉の材料に使うと述べ、特定の条件は明らかにしていません。
彼は、イスラエル国内のアラブ系囚人の解放があるときにのみ2人の兵士を解放するとは言っていないのです。

もう一つ銘記します:イスラエルは意図的に放置したレバノン南部における40万発におよぶ地雷の配置図を引き渡すことを拒否しています。これらの地雷は継続的にレバノンの子供を殺しているのです。

ヒズボラの行動に賛成するか否かに関わらず、ヒズボラの行動をリアクションと見るか扇動と見るかに関わらず、イスラエルによる攻撃は(ヒズボラの行動に)釣り合ったものではありません。
具体的には、ヒズボラがイスラエル兵士を誘拐したとして、イスラエル軍は市民に対する意図的な攻撃を行ってきており、違法でテロリストじみた懲罰を国全体に対して行おうとしているのです。
『(イスラエルの)軍総督であるダン・ハルーツは”(レバノンにおいて)安全なところはどこにもない。、、それだけだ。”』と語った。(ガーディアン紙による)

もう一度申し上げましょう。我々は皆、レバノンにおける状況は悪くなると見ています。また、より多くの虐殺およびレバノンの基本インフラの破壊が行われると見ています。

** オーストラリアやドイツで人々が抗議の声を上げています。アメリカでも抗議しています!レバノンの人々に共感して抗議しています。---レバノンの人々は暴虐を前に団結して立ちふさがっているのです。分断は政治家から生まれるものであり、人々の間から生まれるものではありません。
パレスチナの人々に共感した抗議も行われています。---パレスチナの人々はイスラエルの暴虐を前にして強く耐えてきました。
アメリカ人としては、特に責任があるのです。なぜかというと、これらの虐殺と破壊に使われた武器は、アメリカ人の税金のドルで支払われており、ジョージ・ブッシュと言いなりの議会によってこれが支持されているからです。

** これらの写真をお住まいの地域の地方紙に提供してください。地方紙の記者に会って、レバノンで何か起こっているかを話してください。www.electroniclebanon.netの最新記事を見てください。公平な報道を要求しましょう。殺されているレバノンの人々は名前も顔もあるのです。
(集まった詳細な情報はお分けします。)

** 国会議員に電話して、即刻および無条件のイスラエルの暴虐の停止を要求しましょう。

最後にもう一つだけ皆さんに:南部にいる友人にはいつも電話をしていますが、全く同じコメントが返ってきます。それは、
『私たちは強いし、逆境に負けはしない。私たちは勝つ。魂の強さは抵抗のための最強の武器なのだ。』
というものです。

Rania Masri rania.masri@****

El Koura, Lebanon

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メディア統制によって殺され続けるアラブの子ども達

メディアがアラブの人々、イスラム教の人々の悪いイメージをつくり、実際のアラブ人とは全く違う、(本当に実際のものすごく明るく人懐こいアラブ人を知っていればいるほど笑える)正反対とも言える特性をアラブの人のイメージに植え付けていることは知っていた。
そして、それがイスラエルに牛耳られた欧米のメディアからのものであることも後に知った。

イラク戦争もこうして起こることが許された。決して人類が許してはいけないことのはずなのに。

今回のレバノンへの爆撃も、こうしてイスラエル軍の統制により正当化されたのだということが分かった。

イスラエル軍の報道管制担当の主任(Col. Sima Vaknin)はAP通信に対し「私は、新聞社や放送局を閉鎖することなどを含む、ほとんどどんなことでもやれる強大な権限を持っている」と述べたそうだ。

一体、こうしたイスラエル、アメリカのメディアのイメージ戦略に世界の世論が騙されることによって、どれだけ多くのイラクの、パレスチナの、レバノンの、アラブの子ども達の命が奪われ続け、それも全く知らされず、それが正当化され続けているのだろうか。

田中宇の国際ニュース解説の情報から http://tanakanews.com/g0725media.htm

7月12日にイスラエルがレバノンに侵攻して以来、衛星放送の「BBCワールド」の英語のニュースを見ていると、イスラエルからの現地レポートが始まったとたんに音声が途切れたり、映像が切れてしまうことが何回かあった。アナウンサーは「技術的な問題が生じた」と説明して次のニュースに移るという対応をしていたが、私には「問題は技術的なことではなく、イスラエル当局が自国に不利な放映を阻止したのではないか」という疑いが浮かんだ。

 AP通信の記事によると、戦争開始以来、イスラエル軍は、イスラエルで取材するマスコミが報じる戦況報道について検閲を行い、敵方を有利にする情報が流されそうなときには、放送を止めたり、メディアの発行を差し止めたり、記者を拘束したりする報道管制を行っている。イスラエル軍の報道管制担当の主任(Col. Sima Vaknin)はAP通信に対し「私は、新聞社や放送局を閉鎖することなどを含む、ほとんどどんなことでもやれる強大な権限を持っている」と述べている。(関連記事 http://www.startribune.com/722/story/562903.html  )

 報道管制は、イスラエル国内のマスコミだけでなく、イスラエルに駐在ないし短期滞在して取材する外国のマスコミや、フリージャーナリストにも適用される。BBCの放送は、イスラエルの取材現場から、衛星回線を通じてロンドンの編集センターに送られていると推測されるが、イスラエルから衛星回線に乗せる際、イスラエル軍の報道管制担当の検閲を経ていると思われる。報道管制官は、必要に応じてビデオ信号の流れを止めたり、音声だけを止めたりしているのだろう。

 私が「これは報道管制だな」と感じた一つのシーンは、ヒズボラのロケット弾がイスラエル北部の町ハイファに着弾し始めた2日めの現場レポートだった。前日のイスラエル国内新聞の報道では、ハイファの市民は意外と平静で、ヒズボラのロケットが着弾した場所を見に行く野次馬が多かったと書いていた。

 翌日のBBCニュースでは、ハイファに滞在する記者が「ハイファ市民は意外と冷静で・・・」と現地レポートを始めたとたん、映像が途切れてしまった。アメリカの新聞などでは「ヒズボラの攻撃でイスラエルは大変なことになっている」といった感じの報道が多く、これこそがイスラエル軍の望んでいる報道なのだろう。BBCが「イスラエル市民は意外と冷静で、ミサイルの着弾現場には野次馬がたくさん来ています」といった現実を報道してしまうと、世界の世論にイスラエルを不利にする悪影響を与えかねない。だから軍が放送をカットしたのではないかと思われた。

 さらにその翌日のBBCのニュースでは、ハイファの現場レポートが著名な戦場記者(Lyse Ducet)に入れ替わり、ほとんど人がいない繁華街を背景に「みんな防空壕に避難し、市民生活が奪われています」といったレポートをしていた。これはカットされず、検閲に合格したようだった。

▼「中東特派員をやめられて嬉しい」

 アメリカでは、イスラエルは、今回の戦争が始まるずっと前から「検閲」を行っている。中東問題に詳しいロバート・フィスクが昨年末に報じたところによると、アメリカの多くのマスコミは、在米のイスラエル右派系勢力からの脅しやヒステリックな抗議を受け続け、中東の情勢について事実ではないことを書かねばならない状況に追い込まれている。

 ボストンの新聞ボストングローブの中東特派員は、配置換えで中東を去るにあたって「もう事実をねじ曲げて記事を書かなくても良くなるのでうれしい」とフィスクに述べたという。アメリカのイスラエル右派系の団体は、マスコミに対し、親イスラエル的な表現を使わない記事について非難を繰り返し、記事の表現を変えさせ、悪いのはパレスチナ人の方であるという印象を、読者に持たせるべく、活動を続けている。(関連記事)

 イスラエル右派系の過激な活動家たちが標的にしているのはマスコミだけでなく、中東問題を教える大学の教官や、中東に対する外交政策を討論する政治家などに対しても、さかんに行われている。私が2000年にアメリカの大学で中東の地域学の授業を聴講していたとき、すでに教室の最前列にはキッパ帽をかぶったイスラエル系アメリカ人の学生が陣取り、教官がイスラエルについて批判的なことを言わないよう監視していた。

 すでにアメリカでは、中東問題に関する報道は歪曲が定着し、学者もきちんとした研究ができず、政治家はイスラエルを批判することが不可能になっている。中東問題に関しては、ジャーナリズムも、アカデミズムも、民主主義も、すでに死滅している。

 この傾向は1990年代末からひどくなり、2001年の911事件を機に、決定的になった。そして、この「死滅状態」を活用して起こされたのが、2003年のイラク侵攻であり、今回のイスラエルのレバノン侵攻である。

▼イスラエルの戦術を見習う諸勢力

 最近では、イスラエルのやり方を見習って、過激な活動家集団を形成してマスコミに圧力をかけ、報道の論調を自分たちに有利な方向に傾けさせようとするいくつもの勢力が、世界中で活動するようになっている。

 たとえば、欧米で強いアルメニア系の勢力は、第一次世界大戦の時期にトルコがアルメニア人を虐殺した話をテコに、反トルコのキャンペーンを世界中で展開し、虐殺されたアルメニア人の数をできるだけ多く見積もる運動(ホロコーストの被害者数の運動から学んだのだろう)を行ったり、トルコを少しでも擁護するマスコミの言動を潰したりしている。

 アルメニア人は、アゼルバイジャン(トルコ系のイスラム教徒)とのナゴルノ・カラパフ紛争に関しても、すべてアゼルバイジャン側が悪いという宣伝を世界的に行い、かなり成功している。アルメニア人は、イスラエル人(ユダヤ人)と同様、欧米に広く民族が離散しており、国際的な政治活動がうまい。

 トルコ系も世界に移民がおり、イスラム教徒も世界中にいるのだが、彼らは結束できず、連帯した巧妙な政治活動が下手で、いつもユダヤ人、アルメニア人、アングロサクソン(米英)などの巧妙な人々に完敗し「悪者」役をやらされている。

 日本国内で、イスラエル右派のやり方を学んだのではないかと思えるのは、北朝鮮の拉致問題に取り組む勢力の中の一部である。拉致問題に取り組む団体の活動家から脅しを受け、記事の論調を書き直させられたという、数人の雑誌編集者や記者から話を聞いたことがある。

▼軍広報官を苛立たせる

 今回のレバノン戦争に際し、イギリスでは当初、アメリカと同様、イスラエルを無批判に支持していた。しかしイスラエルが空爆によってレバノンの一般市民の住宅や公共施設を容赦なく破壊し続けたため、イギリスの世論が反イスラエル的になった。

 以前の記事に書いたように、イギリスは、アメリカの覇権力を使って世界を動かす「英米同盟中心の国際協調戦略」を採ってきた。このためブレア首相は、できる限りブッシュ政権と歩調を合わせようとしたが、イスラエルによる残酷な攻撃は、イギリス政府内にすら反イスラエル的な意見を広める結果となり、開戦から12日たった7月24日、イギリスの外相が公式に、イスラエルのレバノン市民社会に対する攻撃を非難した。(関連記事)

 これを機に、BBCなどイギリスのマスコミは、レバノンで惨状を大々的に報道するようになり、イスラエル批判の論調を強めた。イギリス以外の欧州諸国でも、世論はすでにイスラエルを強く非難している。

 軍の報道管制があるイスラエル側からの現場レポートは、イスラエルを批判するとカットされてしまう。そのためBBCの記者(Lyse Ducet)は、巧妙なやり方をしていた。イスラエル軍の広報官にレポート現場に来てもらい、記者が「今日、イスラエル軍はレバノンの国営テレビ局を空爆しましたね」と尋ねると、軍広報官は「ヒズボラの行為を宣伝していたので」と返答。記者は「しかし、国営テレビ局はレバノンの国民生活に必要不可欠なものだったのではないですか」と尋ねると、広報官が「われわれは必要に応じて攻撃を行っている」。

 記者はさらに「今日は、レバノンの携帯電話の基地局も空爆しましたね」。広報官は「携帯電話がテロ組織に使われていたから」。記者は「しかし、携帯電話は、一般市民の生活必需品だったのではないですか」。不利になってきた広報官はしだいにイライラして「われわれはテロ組織と戦っており、必要に応じて作戦を展開している」と怒った感じで返答した。記者はイスラエルを直接批判しなかったが、テレビを見ている人々には、何が起きているかが伝わった。広報官が出演しているニュースなので、イスラエル軍は放映をカットするわけにもいかなかった。

▼沈黙する日本

 イスラエルに対する擁護と非難で騒然としている欧米のマスコミとは対照的に、日本のマスコミでは、今回のレバノンでの戦争は、意外な小ささでしか報じられておらず、沈黙している。このニュースは、新聞の一面やテレビのトップニュースにならない日の方が多い。

 今回の戦争は、インドから北アフリカまでの広い範囲を巻き込んだ大戦争になりかねず、アメリカの覇権や戦略に大きな影響を与えそうである。イラクの泥沼化以来、厭戦気分のアメリカは、孤立主義の傾向を強めかねず、だからこそイスラエルはアメリカを中東での継続的な戦争に巻き込むため、ヨルダンを攻撃し続けている。アメリカでは「すでに第3次世界大戦が始まっている」と指摘する分析者も多い。

 アメリカの覇権が大きく揺れていることは、対米従属の戦後60年を送ってきた日本の政府と国民にとって、非常に大きな関心事であるはずである。しかし日本では、政府もマスコミも沈黙している。レバノンで起きている戦争が、日本を含む世界に対してどんな意味を持っているかについての分析や議論は、全くといっていいほど行われていない。

 このような状態になっている理由はおそらく、戦後の日本の対米従属が「アメリカの内部で決まったことに従う」という自主規制に従ってきたからだ。「お上」の宮廷内の不和については、興味を持たず、見て見ぬ振りをするのが賢明だ、下手に関心を持って意見を言ったりすると、痛い目に遭うかもしれない、と考えるのが、日本なりの戦後の生きる知恵である。

 911以来、イスラエル系の勢力が米政界をかき回してテロ戦争を激化させているのは、日本から見るとまさに「お上の宮廷内不和」である。この件について日本人が騒ぐことは危険なので、政府は沈黙し、マスコミはなるべく小さくニュースを扱っているのだろう。日本政府は、アメリカの宮廷内紛で最終的に勝つ勢力が確定したら、その勢力の命令を聞こうと待っている。しかし911以来、宮廷内紛は激しくなるばかりで、終わる見通しがない。

▼「ジャーナリズム」の本質

 従来、日本では「マスコミは、政府から何の規制も受けずに報道している」というのが「常識」で、その常識からすると、日本のマスコミが政府の意を受けてレバノン戦争のニュースの扱いを小さくしていると考えるのはおかしい、ということになる。だが、911以来、日本にとっての「お上」であるアメリカが戦時体制を続けていることから考えて、今では日本のマスコミの上層部が、日本政府から何の「アドバイス」も受けていないとは考えがたい。

 世界的に見ると、ある国が戦争を始めたら、その国のマスコミが戦争に協力した報道を行うことは、半ば義務である。マスコミが政府の戦争に協力しなければならないのは、公的な組織として、抵抗しがたいことである。

 マスコミ業界の世界的な中心地であるアメリカでは、マスコミは、開戦後に戦争に協力するだけでなく、政府による戦争開始の策動に協力してきた。アメリカのジャーナリズムの賞として世界的に有名なものに「ピューリッツァ賞」があるが、この賞を作ったジョセフ・ピューリッツァは、1898年にアメリカとスペインの戦争(米西戦争)が始まる原因を作った人である。

 米西戦争は、当時スペイン領だったキューバに停泊中のアメリカの戦艦メーン号が何者かによって爆破沈没され、これをピューリッツァの新聞「イブニング・ワールド」などのアメリカのマスコミが「スペインの仕業に違いない」と煽り、開戦に持ち込んだ戦争である。メーン号が沈没した理由が、故障による自損事故だったことは、後から判明した。

 この米西戦争開始の経緯を見ると、アメリカのマスコミが政府の肝いりで「イラクは大量破壊兵器を持っているに違いない」と煽って開戦に持ち込み、後で、実はイラクは大量破壊兵器を持っていなかったことが分かったという、105年後の2003年に起きたイラク侵攻と、ほとんど同じであることが分かる。

 ピューリッツァとその後の同志たちが巧妙だったのは、自分がやっていた扇動ジャーナリズムを、洗練された知的で高貴な権威あるイメージに変えることを企図し、成功したことである。ピューリッツァは、ニューヨークのコロンビア大学に巨額の寄付を行い、ジャーナリズム学科を創設した。今では、コロンビア大学のジャーナリズム学科は、ジャーナリズムを学ぶ場所として世界最高の地位にあり、ピューリッツァ賞は、世界最高の賞となっている。「ジャーナリスト」は、世界中の若者があこがれる職業になった。

 しかし米西戦争からイラク侵攻まで、「人権」などの一見崇高なイメージを使って敵方の「悪」を誇張し、自国にとって有利な戦争を展開することに協力しているアメリカのマスコミのやり方は、巧妙さに磨きがかかっただけで、本質は変わっていない。

(ベトナム戦争では例外的に、アメリカのジャーナリズムが自国の政府や軍を批判したが、これは、米政界内で、冷戦派と反冷戦派が暗闘していたことと関係している)

 人々が、マスコミによるイメージ作りに簡単にだまされてしまう状況も、105年間、ほとんど変わっていない。むしろテレビがお茶の間を席巻した分、昔より今の方が、世界的に、人々はより簡単にだまされてしまう状況になっている。

「チェチェン 市民の証言」

今日、これからNHKのBSでチェチェンの放送があるそうです。 

9月から取材者とNHKとの考え方の違いから紆余曲折があって延期があり、なかなか放送されなかったそうです。
 

ぜひ見てみたいと思います。 

「チェチェン 市民の証言」 
 1月14日(土)午後10:10~11:00 
 NHK BS1 BSドキュメンタリー 

最近ではロシア政府によって対テロ戦争の名の下でイスラム原理主義だなどと、長年の問題を摩り替えられてき
たチェチェン。石油のパイプラインがある土地であるために、ロシア軍に20万人というチェチェンの人口の大
部分が殺害されたそうです。
全員を列車で強制移住させられる途中で多くが亡くなったそうです。

北オセチアでの事件も、実際チェチェン人によるものかは、正確には定かではないとか。

世の中を注意深く見る必要をこのチェチェン問題でも気づかされます。

パキスタン北部地震の現場から

パキスタンを震源とする大規模な地震発生から1ヵ月が過ぎた。
いまだ支援物資は十分でなく、これから被災者は厳しい冬を迎えようとしている。現地を取材した土井敏邦と森住卓が震災地のいまを伝える。

1122日(火)文京区区民センター3A

開場 18:30 開演時間 19:00~21:00

入場料 500

一般の方も、もちろん参加できます。

文京区区民センター 地図・交通
http://www.city.bunkyo.lg.jp/shisetsu/kumincenter/

土井敏邦(Toshikuni DOI

 「ツナミ」被害の報道と救援に疲れた国際社会は、死者8万人を超えるパキスタン北部大地震への反応は鈍い。地震から3週間後、現地に入って、その破壊の凄まじさと、救援の遅れに衝撃を受けた。救援活動を続ける韓国やアラブ首長国連邦の医療チームを追いながら、「海外での災害にも、まず自衛隊派遣」の日本政府のやり方はほんとうに有効なのか、厳冬が迫る震災地の被災者たちが日本にどういう支援を望んでいるのかを追った。

森住卓(Takashi MORIZUMI

「山が動いた」と住民が言っていた通り、ヘリから見たカシミールの山々はいたる所で崩壊していた。 崩れ続ける山は舞い上がる埃が谷あいから頂上にのぼり、まるで霧が立ちこめているように見えた。 印パ国境カシミールは現在も紛争地帯。この地域は立ち入り許可が出ないが災害時とあって簡単に立ち入り許可が出た。 普段は見られないカシミール辺境の地からのレポートである。

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